2020/05/05
【志村けん】コロナでこの世を去った稀代のコメディアンは”静かな人”だった
0.腹がよじれるほど笑ったヒゲダンス
志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなりました。享年70歳。偉大な芸人のあっけない最期に、多くの人が驚き、そして悲しみに暮れました。
1970年代。当時の小学生がみんなそうだったように、僕も毎週土曜日に放送される「8時だヨ!全員集合」を楽しみにしていた子供の1人でした。なかでも志村さんと加藤茶さんの「ヒゲダンス」を初めて見た時は衝撃で、生まれて初めて「腹がよじれるほど笑う」という体験をしました。
その後も「変なおじさん」や「バカ殿」などのキャラクターを生み出し、一貫してコントを作り続け、僕たちを笑わせてくれた志村さん。本当に、国民的なスターと言って間違いないと思うし、そういう偉大な人をコロナウイルスという通り魔のような存在によって失ってしまったことは、僕たち日本人にとっては怒りのやり場が無くて、本当に悲しい出来事として記憶に刻み込まれました。
Ⅰ.シャイな大物芸人
志村さんの素顔を知る人は、志村さんは実はとてもシャイで人見知りだった、と言います。
志村さんと仲が良かったお笑い芸人の千鳥・大悟さんは、志村さんから「飲み会に後輩を連れてこいよ」と言われたので連れて行くと、志村さんは緊張して何もしゃべらなくて困った、とインタビューで答えています。ピースの又吉直樹さんを連れて行ったときは2時間無視していたそうです(笑)。これは決して悪気があってのことではなく、単に、極度の人見知りだったからなのだそうです。
さらに有吉弘行さんが、志村さんの舞台を見に行って、舞台後に楽屋に挨拶に行ったときのこと。顔を見せてすぐに帰ろうと思って楽屋を覗くと「おいでおいで」と呼ばれたので近寄って、「どうも」とあいさつ。「よく来たね」と言われた後5秒ぐらい見つめ合って、会話が無いから、深々とお辞儀をしてそっと帰ったそうです。とにかくシャイで人見知りな人なのだそうです。
こういう報道から見えるのは、華やかな世界で生きる大コメディアンでありながら、志村さんのその素顔は実はとても静かな人、ということです。そしてこのことが実は、コント一筋でこだわり続け、緻密で繊細に作り込まれたコントを生み出し続けたことと深いつながりがあるのではないかと、僕は思うのです。
Ⅱ.内向型の人が持つ粘り強さ
「Quiet~内向型人間の時代」の著者であるスーザン・ケインは、この本の中でこう言っています。
「内向型は、持続力や問題を解決するための粘り強さ(中略)を持っている」と。
志村さんが内向型の人だったと断定する資料はありませんが、仕事以外の時の志村さんは極度の人見知りであり、シャイで物静かだった、という周囲の人たちからの発言から、自身が演じるコントのキャラそのものの破天荒な外向型ではなく、静かに自分と向き合う内向型の人だったのではないか、と思います。
そして、スーザン先生はこうも言っています。
内向型の人は、報酬の多寡に関係なく、自分が大切だと思えるプロジェクトに集中し、我が道を行くために測り知れないパワーをもたらすのだ、と。
志村さんは役者の誘いが何度もあったにもかかわらず、コントにこだわり続けました。自分がやりたいと決めた一つのことを、深く深く考え、緻密に組み立て、何年にもわたって集中してやり続けられる強いパワーを持っていた人でした。それが、人々を楽しませるコントを生み出し、老若男女、日本人はもちろん海外の人をもファンにしてしまうクオリティの笑いとして結実したのです。
Ⅲ.ひとつのことをやり続けろ
タレントの出川哲朗さんは、志村さんからこんな言葉をかけられたそうです。
「『出川、お前は俺と似ているな』と言われたんです。『お前はリアクションで、俺はコントだけをずっとやり続けている。芸人は不器用でいいんだ、器用になる必要がない。自分の好きなことだけをやり続けたほうがいいと思うから、お前もリアクションをやり続けろ。俺もコントをやり続けるから』、と」。この言葉を聞いて、「僕がやってきたことは間違ってなかった、これからもそうやって頑張っていきたいな、と思えたのでよく覚えています」と話したそうです。(FLASHより転載)
また、お笑いコンビのタカアンドトシさんは、志村さんに「ひとつのことをやり続けろ」と励まされたと言っています。
「欧米か」でブレイクした後、「次」が生まれずに悩んでいた時、志村さんは「(ギャグが)ひとつあるだけでもすごいんだよ。それをやり続けろ。俺だって変なおじさんとバカ殿しかないんだから」とアドバイスしたそうです。
出川さんに対してもタカトシさんに対しても、志村さんは「ひとつのことを続けることの大切さ」を説いています。
とかく現代は、ひとつのことに固執せずに次から次へと新しいことをやっていくことが奨励される風潮もあります。コツコツやる奴はバカ、と言う人もいます。
が、しかし。
やはり本当に偉大な人が言うことは、いつも決まってこれです。↓
「ひとつのことを長く、コツコツと続けろ」。
Ⅳ.志村けんとアインシュタイン
志村さんが内向的だったかどうかは定かではありませんが、少なくともシャイで人見知りだったことは、周りの人からの証言で明白です。
人にやさしく、シャイで丁寧で(後輩にも必ず敬語だったそうです)、そして尚且つ、自分が好きなことに集中し、長期に渡ってやり続けることができるという、内向型の人の特徴を持っている人でした。それをコントというステージで長期に渡って発揮し続けたのではないか、と思います。
「持続性はあまり目立たない。もし天才が1%の才能と99%の努力の賜物ならば、私たちはその1%をもてはやす傾向がある。その華々しさやまぶしさを愛するのだ。だが、偉大なる力は残りの99%にある」とスーザン先生は言っています。
志村さんの天才性については多くの人たちに語られています。多くのお笑い芸人やアーティストたちに大きな影響を与えました。僕ごときが言うのもおこがましいですが、あのヒゲダンスの面白さは、ぶっ飛んだ天才性から生まれたとしか言いようがありません。
しかし、実はその天才性を裏側から支える努力と継続が、志村さんにはあったのです。果てしない時間を費やしてきたその努力と継続性。これこそが僕たちが志村さんから学ばないといけない本当に大切なことなのです。
「私はそんなに頭がいいわけではない。問題により長く取り組むだけだ」と極度の内向型だったアインシュタインは言ったそうです。(参考『内向型の人間の時代』)
志村さんとアインシュタイン。
2人とも天才であることは疑いがない。
そして2人とも、続けることの大切さを知る、シャイな人だったのです。
~コツコツ流のオキテ その二十八~
天才が言うことはいつも同じ。「コツコツ続けろ」
2017/09/22
【必読】最後に笑うのは「何も分かっていない人」
コツコツ流の推薦図書の筆頭ともいうべき「GRIT やり抜く力」によると、成功の秘訣は「一時的な熱中」ではなく「継続的な取り組み」なのだそうです。
ひとつのことにじっくり取り組む
偉業を成し遂げた人たちに、「成功するために必要なものは何ですか?」とたずねると、「夢中でやること」や「熱中すること」と答える人はほとんどいないそうです。
多くの人が口にするのは「熱心さ」ではなく、「ひとつのことにじっくりと長いあいだ取り組む姿勢」なのだそうです。
なぜでしょう?
それは、仕事にしろ、プライベートにしろ、何をやるにしても、成果を生むに足るレベルのスキルに至るまでには、ある程度のプロセスと時間が必要だからではないでしょうか。
例をあげて考えてみましょう。
例えば、あなたが会社内の人に「ありがとう」と声をかけることで、コミュニケーションを円滑にし、社内の人間関係をよくしよう、という方針を決めたとします。
この場合、今まで「ありがとう」という言葉を発したことが無い人が、いきなり次の日から言えるようになるでしょうか。頭ではやろうと思っていても、なかなかすぐにはできないと思います。口の筋肉が動かないと思います。これに「笑顔で」を付け加えると、さらにハードルが高くなります。
笑顔でスムーズに「ありがとう」と言えるようになるためには、練習し、実践を繰り返しながら少しずつ慣れていき、このスキルを高めていく、というプロセスが必要です。つまり時間がかかります。
次に、あなたが笑顔で「ありがとう」と言えるスキルを身に着けたとして、すぐに職場の人間関係が劇的に良くなるでしょうか。現実はドラマのようにはいきません。これも効果が表れるまでには時間がかかります。
人間は、今まで慣れた状態を変えたくない、という心理(現状維持バイアス)を持っていますから、すぐには変わりません。ゆえに、身に着けたスキルを使ってコツコツとやり続け、少しずつ変化させていくという姿勢が重要となるのです。
自分は一生懸命に「笑顔でありがとう」を実践しているのに、なかなか周りに変化がないと、嫌になり、投げ出したくなります。「やっぱりダメじゃん」となります。しかし、ここで、やり続けられない人は、永遠に果実を得ることはありません。
笑顔でありがとうを言えるスキルを持っていても、それを途中で使わなくなってしまえば、職場の人間関係を良くするという目標は達成できません。続けなければ叶わないのです。
ですから、ものごとを成し遂げるためには、一時の熱中ではなく、「ひとつのことにじっくりと長いあいだ取り組む姿勢」が重要だ、と偉人たちは言う訳です。
謙虚なノーベル賞受賞者
先日、「プロフェッショナル 仕事の流儀」というテレビ番組でIPS細胞の発見でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の密着取材を見ました。
番組の最後に、インタビュアーが山中教授に「プロフェッショナルとは?」と質問しました。山中教授は、
「プロとは、自分が何も分かっていないということを分かっていること。そして、それを乗り越えるために、ずーっと努力を続ける人のことだと思います」と言っていました。
「自分は分かっている」と思った時点で、おごりが生まれます。探求心が薄れ、油断が生まれ、見るべきものが見えなくなります。
自分は何も分かってないんだと思えば、謙虚な姿勢で、目標に向かって、地道な努力を積み重ねることができる。山中教授の素晴らしいメッセージだと思います。
謙虚さが無い人は、間違えます。大切なことを見落とします。人望も集まりません。結果、目標に辿り着けません。
続けることで、能力が上がる
人間は自分の持っている能力をほとんど使わずに暮らしているそうです。能力が低いのではなく、使っていないのです。では、どうすれば眠っている能力を使うことができるのか?
それは考え続けること、そしてコツコツとやり続けることです。続けることで、何がしかの結果が生まれる。それをベースにしてさらに続けると、最初は見えなかった領域が見えてきます。
ここが大事です。続けるから、次が見えるのです。階段を一歩上がると、さっきの地点からは見えなかったものが見えるのです。こうして、今まで使っていなかった能力が刺激され、能力が開発されていくのです。
ひとつのことにじっくりと長いあいだ取り組む姿勢。
そのためには、「自分は分かっていない」と肝に銘じる謙虚さが必要。
その姿勢でやり続ければ、能力は開花し、スキルが向上し、達成という果実が得られるのです。
~コツコツ流のオキテ その十六~
じっくりと長い間、謙虚に取り組むべし。