2017/05/31
愛され続ける人・宮里藍
ゴルフの宮里藍選手が現役引退を発表しました。
ゴルファーとしての功績の大きさについては言うまでもありませんが、そのハキハキとして無駄がなく、自分の意見をストレートに表現できるクレバーさに、人間として尊敬していました。
またその真摯に生きる姿勢に、こちらの背筋もピンと伸びてしまうような、そんな思いがいつもします。そして今回の引退会見でも、僕たちにプロとしての「生き方」を見せてくれた気がします。
努力する天才
4歳からゴルフを始め、18歳でプロデビューし、31歳で引退。この年齢での引退は早すぎるという声がある一方で、26年間クラブを握り続けたのは、途方にくれるくらい長いとも言えます。その過程では、私たちが想像できないほどの地味な「コツコツ」があったのだと思います。
体格にめぐまれず、家もそれほど裕福ではなかったと聞きます。その中で、毎日少しずつ努力を積み重ね、世界の頂点にまで上り詰めた功績はとても大きいと思います。
多くの偉大な人がそうであったように、宮里選手も「努力する天才」だったのだと思います。
また、明晰な頭脳の持ち主であることも、ゴルフの才能を伸ばしたことと無関係ではないと思います。コツコツ続けることの重要性を理解し、そして練習や試合を振り返り、改善を積み重ねるためには、クレバーさが求められます。また。ゴルフではストレスがかかる場面で自分の気持ちをマネジメントする能力も身につけなければなりません。
宮里選手は、この考え続ける能力、思考する能力も高かったのだと思います。
思考する能力の高さ
偉大なスポーツ選手を見ていていつも感じるのは、単に運動能力が高いだけではなく、思考する能力の高さも同時に備えているのではないか、ということです。ただ漫然と試合や練習をするのではなく、今日やったことを振り返り、できたこととできなかったことを整理し、次の行動を改善しながら積み重ねられる。これを毎日毎日、継続する。
これは、外部の人たちからは見えません。しかし、成長し続けるためにはものすごく重要なプロセスです。
つまり、自分と対話し、次にやるべき行動を決められる能力。やりっぱなしではなく、いいことも悪いことも振り返り、考え続け、淡々と次の行動に移すという習慣が、一流と二流を分けるのだと思います。
こうした努力を続けられたのは、「アメリカのメジャーで勝つ」という目標にコミットしていたからだと思います。この強いコミットメントによって、藍選手は自らを鼓舞していた。しかし、本人が言っているとおり、絶好調の時でさえ、メジャーで勝てず、目標を失いかけたそうです。強かったコミットメントが揺らぎ、地味な努力を積み上げるエネルギーが湧いてこなくなった。
そんな自分が許せず、引退を決意したのだと思います。
愛され続ける人
宮里選手について選手仲間から聞こえてくるは、その「人となり」の良さ。
小さいころからライバルであり友人でもある横峰さくら選手は、自身がアメリカツアーに参戦したとき、すでにアメリカで戦っていた宮里選手からとても親切にされたことを回想しています。
「右も左も分からないときにすごく気にかけてくれていろいろなことを教えてくれました。そんなにサポートしてくれるの!ってぐらい英語もアメリカの文化も分からない私に本当に優しく接してくれました」(デイリースポーツ)
愛される人は、自分を律する力を持つ一方で、他人に優しく、親切なのです。
戦う相手は自分である。怠けようとしたり、奢り高ぶったりする自分を律し、ただただ目の前の課題に取り組むように向かわせる。常に焦点を自分に当て、何をすべきか、どうすべきか、なぜやるのかと自問する。
自分に厳しい一方で、他人には優しい。ライバルは自分だから、他人に厳しくする理由がない。だからどこまでも優しい。それが愛される理由となるのではないでしょうか。
自分に厳しく、他人にはとことん優しい。
一流の人とは、そんな人だと思います。
最後に、横峯選手はこう結びました。
「藍ちゃんと友達になれたこと、同じ時にゴルフができたことは、私にとって大きな宝物です」
僕たちも、宮里選手というプロフェッショナルの生き方を見られたことは、本当に幸運です。
そして引退した後、宮里選手はどう生きるのか。とても楽しみです。
~コツコツ流のオキテ その十一~
一流の人は自分を厳しく律し、他人にとことん優しい