2018/07/14
粘ったもん勝ち。北野武監督から寺島進への言葉
俳優の寺島進さん。
北野映画を始め数々の映画やドラマに出演する人気俳優です。
この寺島さん。早稲田大学を中退後に役者の世界に入るも、40歳を超えるまで食べられず、長らくアルバイトをしながらの下積み生活をしていたそうです。
北野監督からの言葉
寺島さんは、ある「行動」を起こします。
北野監督がアメリカで映画を撮っているという噂を聞いた寺島さん。出演予定もなく、ただ撮影風景を見てみたいという理由だけでアポも無いのに渡米し、北野監督の関係者に連絡を取り続けたそうです。願いが通じ、異国の地で北野監督と会い、親交を深めることができたのだとか。アメリカにまで自分を慕って追いかけて来る若者に、北野監督も感じるものがあったのかもしれません。
そんな売れない時代に、寺島さんは北野監督からある言葉をかけられます。
「にーちゃん(北野監督は寺島さんをこう呼ぶ)、反射神経が必要なスポーツ選手や芸人と違って、役者には引退がないんだよ。だから粘れよ。死ぬ前に1回天下を獲ったら、それで勝ちなんだよ。だから粘るんだぞ」
この言葉を聞いた寺島さんは、「今は売れていないけど、一生やり続ければ何とかなるかもしれない」、と役者として生きていく覚悟を決めたのだそうです。
その後、寺島さんは北野監督の映画「HANA-BI」に出演。
この映画は第54回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞。日本映画としては『無法松の一生』以来40年ぶりの快挙です。この映画祭で上映された時、会場はスタンディングオベーションに包まれました。そのとき北野監督は寺島さんにこう言ったそうです。
「にーちゃん。お前、粘り勝ちだな。辞めなくて良かったな」
どうすれば粘れるのか?
仕事において粘ることは大切です。死ぬまでやり続けるとコミットしていれば、いつか花開く時がやって来る。
では、粘るためにはどうすれば良いのでしょうか?4つに整理しました。
1.まず、長期間やり続けても飽きないことを選ぶこと。それは多くの場合、好きなことや楽しいことです。好きなことや楽しいことというのは、その時点で自分の性格や能力において適性があると考えられます。そもそも適性がないことをやっても楽しくないですし、好きになりにくいはずです。
2.その仕事の分野が奥深く、研究し続けるほど魅力が出てくるものであること。寺島さんが追及している俳優とか演技という分野も、やればやるほど次の課題が出てくるような、研究し甲斐のある仕事でしょう。私の仕事である「経営コンサルティング」という分野も奥が深く、人生をかけて研究し続けるに足る仕事だと思えるからこそ、今もって続けられているのだと思います。
どんな仕事でも、突き詰めていけばいくほどその奥行きの深さに驚かされることでしょう。その奥深さを「面白い」と思えるかどうかが、継続のカギとなります。
3.理解者がいるということも大切です。自分のことを支えてくれて、応援してくれる人。例えば既婚者であれば、パートナー(配偶者)に自分の仕事を理解してもらえるかどうかは大きな問題です。誰も応援してくれる人がいない中、長期間に渡って困難な境遇に身を置き続けることは難しい。辛さを共有し、時には一緒に笑い飛ばしてくれる人がいると、粘り強くなれます。
パートナーに理解してもらうためには、その人を納得させるくらいの熱量をもって仕事(事業)に取り組んでいることが重要です。口だけで行動が伴っていない人を理解し応援することはできません。経営者は銀行やお客様から応援してもらう前に、まず奥さん(だんなさん)から応援してもらえなければなりません。そうでなければ、赤の他人から応援が得られるわけがありません。
寺島さんの奥さんの情報はありませんが、寺島さんにとって北野監督という理解者に出会えたことは大きかったでしょう。本人も北野監督を恩人と言っています。ではなぜ北野監督は寺島さんを理解し応援していたかと言えば、そこに役者としての才能の他に、寺島さんの熱量の大きさを感じたからだと思います。才能を持った人はたくさんいる。しかし、応援したいと思わせるほどの熱量を持った人は、なかなかいない、ということなのだと思います。
そして誠実であることも理解者を得るためには欠かせません。誰しも、不誠実で信頼のおけない人を応援しようと思いません。だからチャンスは、誠実な人にのみ訪れるのです。チャンスを持ってきてくれるような「キーマン」は、ビジネスに長けた人であることが多く、彼らは誠実な人かどうかを見極める目を持っているからこそ、ビジネスで成功しているのです。一瞬の成功ならいざ知らず、長期に渡って成果を出している人は、その人自身が誠実であり、相手にも誠実さを求める可能性が高いのです。
北野監督は寺島さんの中に誠実さを見たのだと思います。誠実さは考え方に現れ、行動に現れ、目の輝きに現れるのでしょう。だから理解者となり、チャンスを与え、のちの寺島さんの活躍を支えるような温かい言葉をかけたのです。
4.そして、「なぜこの仕事をするのか?」という問いにはっきりと答えられること。ここにコミットしていないと、小さな困難に会うとすぐに辞めてしまいかねません。「なぜ?」をしっかり考えて仕事を選択することは、窮地に立たされたとき、ギリギリのところで踏ん張るために、とても重要になります。
あんたも粘れよ
あるテレビ番組で寺島さんは、生き残りをかけて崖っぷちの戦いをしている女性アイドルに北野監督とのやりとりを紹介し、こう言葉をかけていました。
「あんたも粘りなよ」
そのアイドルはバラエティ番組であることを忘れ、涙ぐんでいました。
死ぬまで続けて、最後に勝てたと笑えれば、人生は勝ち。
結果が出なくてやんなっちゃった時、北野監督の言葉を思い出そう。
「にーちゃん、粘れよ」
~コツコツ流のオキテ その二十三~
★仕事は、粘ったもん勝ち
2017/08/09
【重要】コツコツ流は、嘘つかない
コツコツ流のマニフェスト
コツコツ流は、自分ができる小さな努力を積み重ね、少しずつゴールを目指すやり方です。
ビジネスマンであれば仕事のやり方、
学生であれば、勉強やスポーツのやり方、
芸術に携わっている人であれば、創作のやり方です。
そして時には、生き方でもあります。
私たちは、あっという間に高い目標を達成する人に憧れを持ちます。
そういう人は天才と呼ばれ、そして悲しいことに、僕たちは天才を崇拝しています。
世間は天才のやり方に関心を持ち、コツコツと努力している人のやり方にあまり関心をもちません。
誰しも自分は特別だと思いたい。だから何がしかの才能によって、軽々と、颯爽と、スマートに、大きな成果を達成することを望む。それがカッコいいと思う。それに憧れてしまう。
例えば、勉強していないように見せて、テストで高得点をとってしまう人とかに。
テレビやネットを見ていると、短期間で成功した人が溢れているように見える。
しかし現実は違う。天才のように見える人は外からはそう見えるだけで、裏では相当な努力を積み重ねている。この事実を知らなければならない。
コツコツ流は、一攫千金を望みつつ、そのやり方では目標に辿り着けなかった人たちが戻ってくる場所でもあります。
コツコツやりなさい。ひたすら積み重ねなさい。
若い人から見れば、地味で退屈でカッコ悪いかもしれない。
でも大人になったとき、きっとコツコツ流のカッコよさに気づくでしょう。そういう大人の生き方に共鳴するでしょう。
あなたのまわりにいる、成果を出している人に聞いてみてください。
成功するためにはどうしたらいいか?と。
その人が大人であればあるほど、きっとこう言うでしょう。
「コツコツやりなさい。正しいと思ったことを、繰り返しやりなさい」
世の中には(特にSNSの中には)、
「見せかけの輝き」や「みにくい虚栄心」が溢れています。
しかし、あなたには関係ない。もっと自分を見つめ、自分を知り、自分ができることをやらなければいけない。
コツコツ流によって、才能は磨かれて輝きを増し、コツコツ流によって周りからの信用が得られます。
才能と信用は、積み重ねによって育てられ、僕たちをゴールに近づけてくれます。
才能の輝きも、周りからの信用も、一朝一夕には得られません。それを実はあなたが一番よく知っているはず。自分を信じ、自分ができるほんの少しの頑張りを積み重ねなければならない。
コツコツ流は嘘をつかない。コツコツ流は裏切らない。
コツコツ流が、あなたに自信を与え、あなたを目標地点まで連れて行ってくれます。
コツコツ流家元 豊田礼人
2017/04/18
【挑戦】夢を追う人とその家族
「私の太陽」というドキュメンタリーが、10年以上前にテレビで放映されました。これは、妻子を持つ中国人留学生が、日本で極貧生活を送りながら経済学の博士号取得に挑戦する実話を記録したものです。
テーマは、夢を追う男とそれを支える家族。
僕も経験していますが、生活費を稼ぐべき立場の人(多くは一家の主たる夫)が自分の夢を追う時、家族にも大きな負担がかかります。その過程では不安定な生活を強いられるし、成功の保証なんてどこにもないし、失敗すれば貧乏になるかもしれない。妻や子供にしてみれば、迷惑な話です。
夢や目標を追って挑戦することは美しいが、きれいごとでは済まされない現実があります。起業ブームの世の中ですが、稼がなければいけない立場の人の起業は、とてもシビアです。きちんと稼げなければ、離婚や家族離散の可能性だって、ある。
当時このドキュメンタリーを見た時、とても大きな衝撃を受け、自分のことと重ね合わせたことを思い出します。当時の僕は、国家資格(中小企業診断士)に挑戦中で、不合格という現実を何度も突き付けられ、もがいていました。(※注 その顛末はこちら)
夢に向かって
ドキュメンタリーの主人公、中国人の李(り)さんは、皿洗いのアルバイトをしながら学位取得のために勉強を続ける44歳。10年間日本で勉強し、3年をかけて学位論文を書き上げました。
中国の人なので、日本で働くには苦労も多い中、妻がパートをしながら夫を支えます。中学生の一人娘も健気に父親を応援します。夢に向かって、家族が一つになって必死に生きています。
そんな時、事件が起きます。
妻がパートでせっせと10年間貯めた400万円という大金を、李さんは妻に相談もせずに投資し、失敗してしまうのです。
李さんは教育面で遅れている中国に私立大学を作るためにお金を増やしたいと思って投資したものの、まんまと騙されてしまったのです。これはKKC事件と呼ばれる史上最悪の詐欺事件で、多くの人が被害に会いました。
貧しい中で必死に貯めた400万円が一瞬にして無くなり、当然妻は怒り、娘を連れて出て行ってしまいました。家族の絆さえも失い、李さんは苦境に立たされます。
それでも李さんは、極貧生活をしながらも学位取得のためにチャレンジし続けます。しかしそのたびに落選し、李さんは苦悩します。
食べるものもなく栄養不足で、ほとんどの歯が抜けてしまいながらも、李さんはチャレンジを続けます。皿洗い、大根の皮むき、掃除などのアルバイトでわずかなお金を稼ぎながら。
そして、3度目の挑戦でようやく、李さんは千葉大学から、経済学の博士号を授与されます。今までの努力が報われ、夢が現実になったのです。本人も家族も喜び(奥さんも戻って来てくれたようです)、中国の大学で教職を得たところで、ドキュメンタリーは終わります。
家族も闘っている
夢や目標を追い続けることは良いことですが、簡単には上手くいかず、落ち込み、そして家族を巻き込んでしまいます。妻は、何度やっても失敗する夫を応援し続けるも、自分たちの将来に不安を持つ。応援しているんだけど、不安でたまらない。ただ、横で見守るしかない。「何で受からないの?」と思いつつ、頑張っている夫を知っているから、責めることもできない。ただただ耐えるだけ。
僕自身、自分のことと、妻のことが、このドキュメンタリーの家族と重なってしまい、涙が止まりませんでした。(その後、僕も試験に受かって、報われました)
ドキュメンタリーの中で、学位試験に受からず、父と母が重くるしい雰囲気になっている中で、娘がつぶやきます。
「夢を追いかけて頑張っている人を神様は見捨てない、という諺が中国にあります。それはお父さんのことを言っているんだと思います」
そして、夢は現実になった。父は達成したのです。
最後に神様は微笑む
夢を追い続けることは素晴らしい。しかし、そこに至る道には、とてつもない不幸や不安が転がっている。自分の青臭い夢のために、家族を不幸にしていいのか。貧乏を強いていいのか。
その答えは分からない。
続けても、もしかしたらダメなこともあるかもしれません。それでも続けるかどうかは、本人次第です。本人が、どこまでそれに本気か?ということにも関わってきます。
ドキュメンタリーの中で、李さんは、
「たとえ死んでも、日本で学位をとる」と言いました。死んだら学位はとれませんが、それくらいの決意で挑んだからこそ、最終的に取得できたのか。それともこれは結果論に過ぎないのか。
私は、あきらめずにコツコツ続けた人にだけ、神様は微笑むと思っています。
効率よく、短期間で成し遂げる人もいる。それはそれで羨ましいし素晴らしい。
でも、何度も失敗しながら、挫折を繰り返しながら達成した人は、味が出る。それが、その人の付加価値になるのだと思います。
そしてそれがその後の人生の武器になる。
そんなふうに思います。
※You tube で見れます。5分~10分くらいずつ7本に分割されています。うち2本目が著作権の関係で視聴できなくなっています。いきなり再生されて音が出る場合があるのでご注意ください。
~コツコツ流のオキテ その八~
夢を追いかけて頑張っている人を神様は見捨てない